前回までの記事で、SES企業の選び方や客先面談での逆質問について解説してきました。今回は、SES企業から内定をもらった後、承諾する前に必ず目を通したい「労働条件通知書」のチェックポイントを整理します。
- 内定承諾の前に、労働条件通知書を「SES目線」で読み込もう
- そもそも労働条件通知書とは?雇用契約書との違い
- 労働条件通知書に必ず書かれている項目
- チェックポイント①「雇用形態と契約期間」
- チェックポイント②「就業場所・業務の『変更の範囲』」
- チェックポイント③「給与の内訳(基本給と各種手当)」
- チェックポイント④「固定残業代(みなし残業)の時間数と超過分」
- チェックポイント⑤「待機期間(案件がない期間)の給与」
- チェックポイント⑥「試用期間の長さと待遇」
- チェックポイント⑦「単価連動型なら『還元率』の計算基準」
- 労働条件通知書がもらえない・内容が違うときの対処法
- 書面と口頭の説明が違ったら、承諾前に必ず確認を
- 労働条件通知書に関するよくある質問
- まとめ
内定承諾の前に、労働条件通知書を「SES目線」で読み込もう
読者
SES企業から内定をもらえたんですけど、労働条件通知書ってどこを見ればいいんですか?正直、給料と休日くらいしか見てなくて…
労働条件通知書は、入社後に「聞いていた話と違う」となったときの拠り所になる大切な書類です。この記事では、まず労働条件通知書の基本をおさえたうえで、SESならではの視点で、内定承諾前に確認したい7つのポイントを紹介します。
そもそも労働条件通知書とは?雇用契約書との違い
労働条件通知書は、会社が労働者を雇うときに、給与や勤務時間などの労働条件を明示するための書類です。労働基準法第15条で交付が義務付けられているため、会社は必ず渡さなければなりません。よく似た書類に「雇用契約書」がありますが、役割が少し違います。
| 労働条件通知書 | 雇用契約書 | |
|---|---|---|
| 目的 | 会社が労働条件を一方的に通知する | 会社と本人が合意したことを証明する |
| 交付義務 | あり(労働基準法) | なし(任意) |
| 署名・押印 | 不要 | 双方が署名・押印するのが一般的 |
| 形式 | 書面。本人が希望すればメール等も可 | 書面または電子契約 |
2つを1枚にまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」として渡されることも多いです。名前が違っても、書かれている労働条件をしっかり確認することが大切です。
労働条件通知書に必ず書かれている項目
労働条件通知書には、法律で必ず明示しなければならない項目(絶対的明示事項)があります。主なものは次のとおりです。まずはこれらが漏れなく書かれているかを確認し、そのうえでSESならではの視点でチェックしていきましょう。
| 項目 | SESで特に見るべき点 |
|---|---|
| 契約期間・更新の基準 | 正社員(期間の定めなし)か、有期契約か |
| 就業場所・業務内容(変更の範囲を含む) | 客先常駐の範囲、IT以外の業務がないか |
| 始業・終業時刻、残業の有無、休憩 | 客先の勤務時間に合わせる旨の記載か |
| 休日・休暇 | 年間休日数、客先カレンダーに合わせるか |
| 賃金(計算・支払方法、締日・支払日) | 基本給と手当の内訳、固定残業代 |
| 退職に関すること(解雇の事由を含む) | 退職の申し出期限(1〜3か月前など) |
ここからは、SES企業の労働条件通知書で特に見落としやすい7つのポイントを、具体的な記載例とあわせて紹介します。
チェックポイント①「雇用形態と契約期間」
「SESエンジニアとして採用」と言われても、正社員とは限りません。案件の期間に合わせた契約社員(有期雇用)のケースや、そもそも雇用ではない「業務委託契約」のケースもあります。業務委託は会社に雇われるわけではないので、待機期間の給与や社会保険の扱いが大きく変わります。
✅ 安心できる記載
- 契約期間が「期間の定めなし」(正社員)と明記されている
- 有期契約の場合、更新の基準や更新上限がはっきり書かれている
- 健康保険・厚生年金・雇用保険への加入が確認できる
⚠️ 要注意の記載
- 「案件終了をもって契約終了」のような文言がある
- 面接では正社員と聞いていたのに、有期契約になっている
- 雇用契約書ではなく「業務委託契約書」が出てきた
チェックポイント②「就業場所・業務の『変更の範囲』」
2024年4月の法改正で、労働条件通知書には入社直後の就業場所・業務だけでなく、将来的な「変更の範囲」も書くことが義務になりました。客先常駐が前提のSESでは、就業場所が「会社の定める場所(客先を含む)」のように幅広く書かれるのが一般的です。それ自体は珍しくありませんが、通勤できるエリアに収まるのか、リモート勤務の可能性はあるのかは、あわせて確認しておきましょう。
✅ 安心できる記載
- 変更の範囲が「首都圏の客先」など、具体的に書かれている
- 面接で聞いていた勤務エリアと食い違いがない
- 業務の変更範囲が「システム開発・運用業務」などIT業務に限定されている
⚠️ 要注意の記載
- 「変更の範囲」の記載そのものがない
- 業務の範囲が「会社の定める業務全般」など、職種が限定されていない(IT以外の業務に回される可能性も)
- 遠方の現場への常駐について、事前の説明がない
チェックポイント③「給与の内訳(基本給と各種手当)」
月給の総額だけでなく、基本給と手当の内訳を必ず見てください。SESでは「現場手当」「プロジェクト手当」など、案件に参画しているときだけ支給される手当が設定されていることがあります。総額が高く見えても、待機になった途端に手当分がなくなり、給与が大きく下がるケースもあり得ます。また、現場によって通勤先が変わるので、交通費の支給上限もチェックしておくと安心です。
✅ 安心できる記載
- 給与総額に対して基本給の割合が高い
- 各手当の支給条件が明記されている
- 交通費が実費支給、または上限が十分に設定されている
⚠️ 要注意の記載
- 基本給が極端に低く、手当で総額をかさ増ししている
- 「案件参画時のみ支給」の手当が大きな割合を占めている
- 交通費の上限が低く、遠方の現場だと自己負担が出る
チェックポイント④「固定残業代(みなし残業)の時間数と超過分」
固定残業代がある場合は、「金額」「何時間分か」「超えた分は別途支払うか」の3点が書かれているかを確認します。この3点は若者雇用促進法に基づき、求人の段階から明示が求められている項目です。SESは客先の勤務時間に合わせて働くため、現場によって残業量が大きく変わります。固定残業の時間数と、配属予定の現場の残業実績がかけ離れていないかも見ておきましょう。
✅ 安心できる記載
- 金額・時間数・超過分の支払いの3点がすべて書かれている
- 固定残業の時間数が、現場の残業実績と大きくズレていない
- 超過分の残業代がきちんと支払われる旨が明記されている
⚠️ 要注意の記載
- 「残業代は給与に含む」としか書かれていない
- 固定残業が月45時間(36協定の原則的な上限)ギリギリで設定されている
- 超過分の支払いについての記載がない
チェックポイント⑤「待機期間(案件がない期間)の給与」
SES特有で、最も重要と言ってもいいのがここです。案件と案件の間で参画先がない「待機期間」の給与は、会社によって扱いがまったく違います。会社都合で仕事がない場合、労働基準法26条では平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことが定められていますが、これはあくまで最低ラインです。満額を保証する会社もあれば、この休業手当の水準まで下がる会社もあります。なお「平均賃金」は直近3か月の賃金から計算するため、単純に月給の6割になるとは限りません。
待機時の扱いは労働条件通知書に書かれていないことも多いので、その場合は就業規則・賃金規程を見せてもらうか、人事・採用担当にメールで回答をもらっておくと確実です。
✅ 安心できる回答・記載
- 待機中も給与を満額保証すると、書面で確認できる
- 待機中の過ごし方(社内研修・自社業務など)が決まっている
- 直近の平均待機日数などの実績を教えてくれる
⚠️ 要注意の回答・記載
- 待機時の給与について聞いても、答えが曖昧
- 「待機中は休業扱いで6割支給」が前提になっている
- 待機が長引いた場合の扱いが決まっていない
待機期間の給与や還元率、自分では聞きにくい…という方へ
IT専門の転職エージェントなら、待機時の扱いや給与条件など、本人からは聞きにくいことも企業側に確認してもらえることがあります。内定承諾の前に一度相談しておくと安心です。
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未経験からITエンジニアに!IT専門転職エージェント@PRO人【アットプロジン】チェックポイント⑥「試用期間の長さと待遇」
試用期間は3〜6か月程度が一般的ですが、その間の給与が本採用後より低く設定されていることもあります。期間の長さと待遇、延長される条件があるかどうかも確認しておきましょう。
✅ 安心できる記載
- 試用期間中も本採用と同じ給与・待遇
- 期間が「3か月」など明確に書かれている
⚠️ 要注意の記載
- 試用期間中は給与が大きく下がる
- 期間が長い、または延長の条件が曖昧
チェックポイント⑦「単価連動型なら『還元率』の計算基準」
最近増えている「単価連動型」「高還元」をうたうSES企業では、案件単価に還元率を掛けて給与が決まります。この場合は還元率の数字だけでなく、何を基準に計算しているかが重要です。税込単価か税抜単価か、社会保険料の会社負担分・交通費・賞与が還元額に含まれているかで、同じ「還元率70%」でも実際の手取りは大きく変わります。
✅ 安心できる回答・記載
- 還元率の計算方法が書面で示されている
- 自分の案件単価を開示してくれる
- 単価連動でも、待機時の最低保証が決まっている
⚠️ 要注意の回答・記載
- 「還元率〇〇%」という数字だけで、内訳の説明がない
- 自分の単価を聞いても教えてもらえない
- 社会保険料の会社負担分まで還元額に含まれている
読者
こんなに細かく確認したら、面倒な人だと思われませんか…?
労働条件通知書がもらえない・内容が違うときの対処法
内定は出たのに労働条件通知書がまだ届かない、という場合は、内定承諾の前に送ってもらえるよう依頼して問題ありません。転職エージェント経由で応募している場合は、企業に直接連絡せず、エージェントの担当者を通じて依頼しましょう。直接依頼する場合は、次のようなメールで十分です。
📩 依頼メールの例文
件名:労働条件通知書ご送付のお願い(氏名)
〇〇株式会社 人事部 〇〇様
お世話になっております。〇〇です。
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。貴社への入社を前向きに検討しております。
つきましては、内定承諾のお返事をする前に労働条件を確認させていただきたく、労働条件通知書をお送りいただくことは可能でしょうか。あわせて、案件の待機期間中の給与の扱いについてもご教示いただけますと幸いです。
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。
書面と口頭の説明が違ったら、承諾前に必ず確認を
- 労働条件通知書は書面(本人が希望すればメール等)での交付が義務 → 口頭説明だけで済ませようとする会社は要注意
- 書かれていない項目(待機時の給与など) → 就業規則・賃金規程を見せてもらうか、メールで回答をもらう
- 面接で聞いた条件と食い違う箇所 → 内定承諾の前に、人事・採用担当へ確認する
なお、これらは客先ではなく、内定先のSES企業(人事・採用担当や営業担当)に確認する内容です。入社後に「聞いていた話と違う」となっても、書面に残っていない約束を覆すのは難しくなります。気になる点は承諾前に、形に残る方法で確認しておきましょう。
労働条件通知書に関するよくある質問
Q. 労働条件通知書はいつもらえるもの?
法律上は労働契約を結ぶときに交付することになっていますが、多くの会社は内定通知と同時か、入社前に渡しています。内定承諾の判断材料にしたいので、承諾前にもらえるよう依頼するのがおすすめです。
Q. メールやPDFでもらっても問題ない?
問題ありません。2019年4月から、本人が希望すればメールなどの電子的な方法で受け取れるようになりました。後から見返せるよう、データは必ず保存しておきましょう。
Q. 依頼しても労働条件通知書を出してもらえない場合は?
交付は会社の義務なので、出してもらえないこと自体が危険なサインです。それでも対応してもらえない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。
Q. 入社後に、通知書の内容と実際の条件が違っていたら?
労働基準法では、明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者はすぐに労働契約を解除できると定められています。まずは書面を手元に用意したうえで、人事・採用担当に相談しましょう。
条件面の確認や交渉は、IT専門の転職エージェントに任せるのも一つの手
待機期間の給与や残業の実態など、本人からは聞きにくい条件面も、転職エージェントを通せば企業側へ確認してもらえることがあります。@PRO人は、IT業界経験者のアドバイザーが担当するIT専門の転職エージェントです。
- 相談・利用はすべて無料
- IT業界経験のあるアドバイザーが担当
- 給与・待遇の交渉もサポート
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未経験からITエンジニアに!IT専門転職エージェント@PRO人【アットプロジン】※首都圏(一都三県)の求人が中心です。オンライン・電話での相談にも対応しています。
まとめ
SES企業の労働条件通知書では、「雇用形態」「就業場所・業務の変更の範囲」「給与の内訳」「固定残業代」「待機期間の給与」「試用期間」「還元率の計算基準」の7点を確認しましょう。特に待機期間の給与はSESならではの重要ポイントなので、書面に書かれていなければ必ず別途確認してください。また、労働条件通知書は内定承諾前にもらい、書面で条件を確かめてから返事をするのが鉄則です。入社前の会社選びについてはSES企業選びのチェックポイント、配属前の準備については客先面談で聞くべき逆質問もあわせて参考にしてみてください。

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